カラヴァッジオ
CARAVAGGIO
男と男と女。人生はスキャンダラスに、嘘はゴージャスに。
1987年8月8日-1987年9月25日
2001年11月3日-2001年11月16日 モーニングショー
デレク・ジャーマン監督の「カラヴァッジオ」は、はからずも、デーマに据えたルネッサンス終末期の画家「ミケランジェロ・カラヴァッジオ(1571-1610)の生涯と同じく、スキャンダラスな祝福を受けた作品である。
カラヴァッジオは、当時の社会習慣に反抗し、権力におもねることもなく、自分の思うがままに生きた画家である。そんなカラヴァッジオに呼応するかのようにジャーマンは16~17世紀を舞台にした映画に自転車や計算器、タイプライターを登場させる。1986年冬、ベルリン映画祭を皮切りに各国でこの映画が公開されると、賛否両論の議論が巻き起こった。いわく「史実に反する」「ジャーマンはカラヴァッジオの世界をあまりにも私物化している」etc...。しかしこれらの反対意見は、いつしか「カラヴァッジオ」の独自の魅力を語るポジティブな評価となり、結果、多くの観客がかけつけて大ヒットを記録した。ベルリン映画祭での銀熊賞受賞は、これまで一部の信者だけに、熱烈に受け入れられていた“メディア・ミックスの雄”、デレク・ジャーマンがメインストリームに躍り出るきっかけとなったのである。
製作は、ジャーマンの「テンペスト」も手がけたサラ・ラドクリフ。製作デザインはクリストファー・ホッブス。17世紀の画家ベラスケスとルーベンスの手法を学んだ彼は、ケン・ラッセル作品の特殊効果を手がけている。画面に再現された絵はすべてボッブスの手によるものである。撮影はガブリエル・ベリスタイン。衣装デザインはリンゼイ・ケンプとの仕事でも有名なサンディ・パウエル。音楽はサイモン・フィッシャー・ターナーが担当している。出演は、カラヴァッジオにナイジェル・テリー。舞台で鍛え上げた声と存在感で破滅型の芸術家の苦悩を体現している。カラヴァッジオの愛と憎しみの刃に倒れるラヌッチオには新人ジーン・ビーン。その他レナには、新人ティルダ・スウィントン、デル・モンテ枢機卿には名ワキ役のマイケル・ガウ。
ものがたり
画家ミケランジェロ・メリシ・カラヴァッジオは、今まさに40年の生涯を終えようとしている。類い希な美貌と天賦の才能。そして悪魔に魅入られたかのような数奇な運命。死の床に就く彼の脳裡を、さまざまな愛と憎しみの思い出がよぎっていく。
1571年ミラノ近郊の村で生まれたカラヴァッジオは、ローマの街角で絵を売ったり、少年愛嗜好の金持ち客を脅かしたりの日々を送っていた。そんな無類の生活がたたり、病気になった彼を救ったのはデル・モンテ枢機卿だった。カラヴァッジオは、枢機卿の手厚い保護をうけ、創作に専念することができた。やがて彼の前に現れたのが、逞しい肉体を持つ若者ラヌッチオであった。ラヌッチオをモデルにして描いた大作「聖マタイ伝」の完成は、カラヴァッジオの名声をますます高めることになった。しかし、名声と誹謗は表裏一体である。暴力的で反宗教的なカラヴァッジオの日頃の言動を責める声も高まった。またまた窮地に追い込まれたカラヴァッジオを助けたのは、大銀行家のジュスティニアーニである。彼の注文で描いた「エロス」(異境の愛)の完成祝賀パーティーにカラヴァッジオはラヌッチオとレナを伴って出席する。ラヌッチオの愛人レナ企みは、これを機会に上流階級に近づくこと。その思惑はまんまと成功、法王の甥ボルゲーゼはレナに心奪われてしまう。しかし不愉快なのはラヌッチオである。数日後レナの溺死体が発見され、容疑者としてラヌッチオが逮捕された。ラヌッチオの無実を信じているカラヴァッジオは釈放のために奔走する。法王への直訴が実りラヌッチオは釈放された。だが、自由の身になったラヌッチオはカラヴァッジオの前で真実を告白するのだった。“犯人は俺だ。あんたと俺の愛のために殺っただ”。次の瞬間、カラヴァッジオのナイフがラヌッチオの肉体を切り裂いた。以来終焉の時までカラヴァッジオの長い逃亡生活は続くのだった・・・。
監督:デレク・ジャーマン
製作:サラ・ラドクリフ
原案:ニコラス・ワード・ジャクソン
撮影:ガブリエル・ベリスタイン
音楽:サイモン・フィッシャー・ターナー
キャスト:ナイジェル・テリー/シーン・ビーン/デクスター・フレッチャー/スペンサー・レイ/ティルダ・スウィントン/マイケル・ガウ
1986年/イギリス/カラー/93分
原語:英語
提供:泰和企業株式会社
配給:松竹富士株式会社