悪の華・パッショネイト
VILLAGE DREAMS
心ふるわす危険な熱情
1987年10月3日-1987年11月6日
世の中を支配できるわけでもなく、金持ちでもなく、
飼いならされた小市民でもない・・・。
一度会ったら、忘れられぬ男がいる。
自分の生きかたにこだわり、それを貫く。
だが、彼が通りすぎた後には、
常に危うい男の香りが漂い続けた。
プロにしては優しく、アマチュアにしては辛い、
妙に心をくすぐる気になる奴。
信念に従い一途に友を信じ、
あまりに恋人を愛するが故に、裏切られ傷つき、
あてもなく彷徨い続ける。
そんな、生きかたの流儀にごだわる純粋な男は、
現代の偉大なるアウトサイダーかもしれない。
ニューヨーク、グリニッヂビレッジ。レストランで支配人を務めるチャーリーは、もの静かだが激しい情熱を胸に秘めて生きている。ビジネス、ファッション、セックス・・・すべてに完璧なライフスタイルを持つ彼だが、時に顔をよぎる暗い影。洗練された大人の男を装いながら、どこか少年のような純粋さを棄てずにいるように、ごく普通の生活をしながら、たえず悪の華を咲かせようとするダンディズムを持ったスタイリッシュな男だ。
そんな彼を兄のように慕い、彼についてまわる男、ポーリー。自分には持ち得ないスタイルで生きるチャーリーに心酔しながらも、ついつい現実の流れに身を委ね、刹那の快楽を追い求める。そんなポーリーの引き起こした些細な出来事が、チャーリーが願っていた悪の世界への甘美な誘いとなっていく。自分の意思ではコントロールできない悪のさだめに従って、二人の男は知らず知らずの間に闇の世界の深みにはまっていった。夢追い人のチャーリーの眼前に立ちはだかった、予期せぬ現実。チャーリーの激しさに戸惑いながらも優しさに惚れ、連れ添ってきた美しく愛しい恋人は、そんな時の流れの中で、思い出を残して去っていった。愛を失い、夢がまどろみかけた時、チャーリーは友のために手をさしのべ、自らの生きかたを確かめるかのように足を踏み出した。それが、彼の信じる生きかただった・・・。
「白いドレスの女」「ダイナー」「ランブル・フィッシュ」、そして「ナインハーフ」と一作ごとに様々な男の姿を見せ、ファンの心を虜にするミッキー・ロークが、今までとはヒト味違ったスリリングでスタイリッシュなダンディズムをスクリーンに焼きつけている。ロークは一見物静かだが激しい情熱を胸に持って生きるチャーリーを現代のアウトロー的ヒーロー像を、実にファッショナブルで鮮やかに演じ、圧倒的な存在感を発揮している。彼に憧れ、兄のように慕うポーリーを、「スター80」や「暴走機関車」で強烈な印象を残した若手演技派のエリック・ロバーツが演じ、チャーリーとは対照的な男性像を人間味豊かに醸し出している。これに、チャーリーに胸を焦がし同棲している恋人役で「スプラッシュ」「夜霧のマンハッタン」のダリル・ハンナ、年老いた金庫破りバーニーに「アマデウス」「刑事ジョン・ブック/目撃者」のケネス・マクミラン、マフィアのボスのエディに「ロッキー」シリーズのパート・ヤング、刑事パンキーの母親に「バウンティフルへの旅」のジェラルディン・ページ、パンキーに「セルピコ」のジャック・ゲホーといった役者陣が持ち味を発揮して好演、作品に厚みをもたらしている。
監督は、「暴力脱獄」「ブルベイカー」「さすらいの航海」の巨匠スチュアート・ローゼンバーグ。夢を抱き、それに向かってつき進もうとする男の夢と現実とが交錯する姿をベースに男の讃歌のドラマに仕上げている。男のスピリットを見事に蘇らせた脚本は、この映画がデビューとなったビンセント・パトリック。ニューヨークの鼓動をリアルに捉えた撮影は、「再会の時」「普通の人々」「アメリカン・ジゴロ」の名手ジョン・ベイリー。スタッフ・キャストともに豪華な顔ぶれである。
監督:スチュアート・ローゼンバーグ
原作+脚本:ビンセント・パトリック
製作:ジーン・カークウッド
音楽:デイブ・グルーシン
挿入歌「サマー・ウィンド」:フランク・シナトラ
キャスト:ミッキー・ローク/エリック・ロバーツ/ダリル・ハンナ/ジェラルディン・ページ/ケネス・マクミラン/バート・ヤング
1984年/アメリカ/カラー/121分/ヴィスタ
原語:英語
配給:UIP