バーフライ
BARFLY
この愛はきらめきの狂気、そして酔い痴れる日々─。
1988年4月2日-1988年5月20日
ミッキー・ローク+フェイ・ダナウェイ
今やドル箱スターの域に到達したミッキー・ロークが、また新たなラブストーリーにチャレンジした!
小市民的な生ぬるい生活に背を向ける男、ヘンリー。人間に失望し嫌悪さえ抱く孤独な女、ワンダ。彼らはアメリカ社会に浸透している生き方にドップリとつかりながら、同時にそこから逃げ出そうともがく。月曜日から金曜日までのオフィス・ワーク、車のローンや生命保険、就職、解雇etc。二人は人間が存在し続ける上での恐怖と正面から対立し、すべてに忍従するような死せる人生を頑なに拒絶する。石にかじりついても自分自身であり続けようとする悲痛なまでの望みを、勇気ある狂気で浮き彫りにした一風変わったラブ・ストーリーだ。
主演のミッキー・ロークは『ランブル・フィッシュ』『ダイナー』『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』『ナインハーフ』『エンジェル・ハート』とスターダムを駆け登り、映画界にゆるぎない地位を築き、最も脂の乗りきった男優の呼び声が高い。対するフェイ・ダナウェイは『ネットワーク』でアカデミー主演女優賞を獲得した、ベテラン演技派である。
監督はバルベット・シュローダー。脚本はチャールズ・ブコウスキーで、彼の若かりし頃の体験をベースにしている。提供はフランシス・F・コッポラ。
ロスの下町の酒場、ゴールデン・ホーン(黄金の角)─。くつろぎの場所とはほど遠い、この場末のバーには様々な人間がたむろしている。感性の鋭い若き作家、ヘンリー・チナスキー(ミッキー・ローク)もその中の一人。彼は社会の歯車に組み込まれるのを拒んで酒に明け暮れ、気が向けばペンを走らせる。短期な夜勤のバーテンのエディ(フランク・スタローン)、寛容で心優しい昼間のバーテンのジム(J・C・クイン)、枯れ果てた化石のような女リリー、男とみれば誘惑するジャニス(サンディ・マーチン)等々。強烈で浮世離れした客の人間模様はヘンリーにとって日々の糧であり、彼は外の世界を拒否する一方で、この世界をリアルな現実として素直に受け入れるのである。
「安心しな、今まで俺を愛した女なんていやしない」─、現実と幻想の世界を泳ぐヘンリーはワンダ・ウィルコックス(フェイ・ダナウェイ)と出合う。彼女はインテリゆえに人生に幻滅を抱き人間を嫌悪さえして、生きる目的さえ失っている孤独な女である。恋とは無縁の人生と決めこんでいる男と女、やがて二人は酒ビンが取り持つ縁で恋に陥る。アルコールだけを友とし愛もなく寂しく生きてきた彼等は愛を怖れ、愛することで生じる痛みも怖れていた。時にはお互いに妥協したり、まるでハートにナイフを突き立てるように傷つけ合いながらも、ともかく二人は初めて他人と人生を分かち合うのだった。
ところが口ヒゲを生やした謎の男(ジャック・ナンス)の出現によって、二人の関係が突然破られた・・・。
高貴な野蛮人ミッキー・ローク ─渡辺祥子
ミッキー・ロークの肉体を借りて演じられるヘンリーという男には、見る者の心を奪わずにはおかないなにかがある。
彼には、アルコールで身を滅ぼすのと引き換えに見事な作品を残した多くの芸術家たちのように、飲んだくれの仮面の下に輝ける才能を隠しているのかもしれない。傲慢という名の堅い殻で、傷つきやすく、やさしすぎる心を護ろうとしているのかもしれない。
彼を見ていると、そんな想いがどんどん浮かんでくる。
作家で詩人でもあるチャールズ・ブコウスキーが、ヘンリー像にみずからの過去を重ねあわせて脚本を書いた『バーフライ』は、ヘンリー役にミッキー・ロークというユニークな個性を持った俳優を得たことで、素晴らしく魅力的な映画になってしまった。
そして、高貴な野蛮人とでも読んでみたいヘンリー役を演じて、ミッキー・ロークは、ついに彼の代表作として記憶される作品を放ったのだ。
監督:バルベット・シュローダー
製作:バルベット・シュローダー/フレッド・ロース/トム・ラディ
脚本:チャールズ・ブコウスキー
撮影・ロビー・ミュラー
総指揮:メナヘム・ゴーラン/ヨーラム・グロバス
編集:エバ・ガードス
共同製作:ジャック・バラン
提供:フランシス・フォード・コッポラ
キャスト:ミッキー・ローク/フェイ・ダナウェイ/アリス・クリッジ/フランク・スタローン/J・C・クイン
1987年/アメリカ/カラー/101分
原語:英語
配給:ワーナー・ブラザース映画