CINEMA RISE

1990年6月9日-1990年7月13日

総ぜい60名がおりなす愛すべき人生賛歌。
パリに住む人々の1年の最大のおたのしみは30日間にわたる夏のバカンス。日常を忘れ、パリで女だけの休日を楽しむ妻たち。妻から開放され、子供たちと童心に帰る夫たち。そんな夫たちに言いよる若い女性。そして大人たちの混乱をよそに、この多感な季節を謳歌する子供たち・・・親子の愛情、浮気、嫉妬、孤独。繊細で、こっけいで思わず共感せずにはいられない、そんな愛すべき総ぜい60名におよぶ人々のバカンスにおける人生模様を見事なタッチでうたいあげた、味わい深い名篇の登場である。
“これぞ現代のエスプリ・シネマの真珠！”（リベラシオン紙）　“会話の洪水！ 言葉の芸術の妙！ 素晴らしい俳優たち！”（プルミエール誌）　“人生を愛することの大切さを思い出させる”（ル・パリジャン紙）　“なんと魅力的な集団だろうか”（ユマニテ紙）　“カメラというシェイカーで作りあげた楽しく美味しいカクテル”（フランソワ・ソワール紙）━　公開とともに全ヨーロッパで大ヒットを記録するとともに、フランスのジャーナリズムはこのはじけるような人間賛歌を絶賛し惜しみない拍手を送った。フランス映画伝統の見事な映像美とリズミカルで流麗な音楽もまた、本作の見逃せない魅力となっている。

バカンスこそ喜劇、バカンスこそ悲劇。
今年もパリにバカンスの季節がやってきた。パリっ子たちは8月を、おもいおもいの避暑地で過ごす。だが最近ちょっとした異変がおきていた。今やバカンスに行くのは夫や子供たちばかり。家族を送り出したあと、かつての男たちがそうだったように、パリに残って気ままな独身貴族を装うのは女たちなのだ。
そんな人妻のひとりドラは、夫マルタンや息子、姪の一群をイル・ド・レ島行きの列車に押し込むと、女友だちが待つ街のカフェへとくり出していく。いよいよ待ちに待った自由が訪れようとしているのだ。気ままな情事をかけもちする女、不倫に身をこがす女、孤独にたえかねてマザコンの男のもとへ走る女、嫉妬のあまり得体のしれない魔術に手を出す女・・・　妻たちはみな“有意義”な時を過ごそうとそれぞれに奔走する。
ところ変わって陽光ふりそそぐイル・ド・レ島の美しい浜辺では、夫たちがいつのまにか中学生の坊やのようにひとつのグループにかたまっていた。ある者は自分の惨めさを人に見せびらかし、ある者は子供の世話に忙殺されてのんびり過ごすこともできない。人生にやりこめられて、たまりにたまったうっぷんを晴らすため、彼らが夢みるものはただひとつ、“ひと夏の情事”！？　そして、そんな父親たちの憂鬱にはおかまいなく、きらめく時の波間を飛びはねつつ、幼いながらも真剣な初めての恋に子供たちはめざめていく・・・。
かろやかに楽しく、時に騒々しく、バカンスはいま始まったばかりなのだ・・・。

この映画を生き生きとして、楽しいものと思ってもらえたら、うれしい。（パスカル・トマ監督）
監督は、フランス映画の吟遊詩人といわれるパスカル・トマ。思春期の少年たちのひと夏の経験をみずみずしく描いた『上級生』により27歳で監督デビュー、“これぞシネマ・ジューヌ（青春映画）”と当時、大絶賛を浴びた。本編はそんなトマ監督が17年間あたためてきた念願の作品。自分の友人たちの人物像をモチーフに、魅力的な集団ドラマを作りあげている。
出演者は、トマ監督の友人でもある俳優ばかり。『上級生』『柔らかい肌』のダニエル・チェカルディ、『パッション』のジャン＝フランソワ・ステブナン、トップモデル出身のスーザン・モンクール、『ハーレム』のミシェル・ロバン、『スワンの恋』のカトリーヌ・ジャコブ、『ザ・カンニング/アルバイト情報』のギィ・マルシャンら。さらにトマ監督の二人の子供、18歳のエミリーと20歳のクレマンが、重要な役を演じている。
ロケは西フランスの有名な避暑地ルイ・ド・レ島およびパリで60日間かけて行われた。撮影は『バスティアンとバスティエンヌ/湖畔にて』の名手ルナン・ポール、印象的な音楽は新人マリーヌ・ロジエ。脚本にはトマ監督と彼の長年の友人フランソワ・カビリオーリが、製作には『死への逃避行』のシャルル・カッソが当たっている。

製作：シャルル・ガッソ
監督＋脚本：パスカル・トマ
脚本：フランソワ・カビリオーリ
撮影：ルナン・ポール
音楽：マリーヌ・ロジェ
音楽総指揮：レオ・クラレン
セット：クリスチャン・バレラン
衣装：リリ・デュ・ティマ
編集：ナタリー・ラフォーリー

キャスト：ジャン＝フランソワ・ステブナン／スーザン・モンクール／エミリー・トマ／クレマン・トマ／オルガ・バンサン／ミシェル・ロバン／カトリーヌ・ジャコブ

1988年／フランス／カラー／115分
原語：フランス語
字幕：松浦美奈

配給：アルバトロス・フィルム