キャンディ・マウンテン
CANDY MOUNTAIN
もう一度、路上で会おう。
ろくでなしで、無鉄砲なロッカーが旅にでた。
伝説のギター職人を探しに
1990年12月1日-1990年12月21日
ローリング・ストーンズを追ったドキュメンタリー
『コックサッカー・ブルース』で
スキャンダラスな話題を放った、
ロバート・フランク監督作品
待望の日本上陸!
解説
写真界の大御所であり、映画作りを通じてジム・ジャームッシュなどへの影響も深い、ロバート・フランクによる話題作であり、ニューヨークから姿を消した伝説的ギター製作者を探して旅に出る若者のオデッセイである。
映画を紡ぐ糸となっているのは、要所要所に出てくるミュージシャンと彼等の音楽だ。デヴィッド・ヨハンセン、アート・リンゼイ、ジョー・ストラマー、リタ・マクニール、それにトム・ウェイツやレオン・レッドボーンまで、ほとんどが意外な役柄で出演し一曲披露する成り行きになるのは楽しい。ほかにもドクター・ジョンなどは、まるで俳優のように出ている。この映画を単にロード・ムービーといってしまうと、あまりにも俗っぽい響きに堕してしまう。放浪の中では、主人公ジュリアスの成長が描かれるばかりでなく、ユーモラスな事件や歌の中に過去のエルモア像が少しずつ浮かび上がってくるのだ。
伝説の名器で一儲を企む人間たちとの交わりの中で、ギター製作者エルモアが芸術家としての誠実さを失わないために、どのように自分と闘い、どのように自分と折り合いをつけたか……。ジュリアスの旅はまさに、エルモアの生活の跡を追体験する行為でもある。そしてこのエルモア像には資本と芸術家の葛藤という、R・フランクと共同監督のR・ワーリッツァーたち自身が絶えず向き合っているジレンマが投影されているといえよう。
旅のなかでジュリアスがかかわるのは、あるがままに着実に生きている人々だが、誰ひとりとして理想やイディオロギーで動くものはいない。また、だれもがタダでは動かない。R・フランクは、この映画のことを「アメリカについて、アメリカ人同士が、どういうつきあい方をするかについて語っています。音楽も非常にアメリカ的です。しかし最後にきて、そのアメリカ的なものが変化します。リタ・マクニールはこのアメリカの影響力を今までとは違う新しいやり方で伝えます。……彼女が歌う歌は控え目ではあるけれど、その影響力の強さを示してくれました」と語っている。
リタ・マクニールの澄んだ高音のヴォーカルの他にも、D・ヨハンセンの洗練されたニューヨーク・ムードからA・リンゼイ、J・ストラマーらのハードな音楽。トム・ウェイツやL・レッドボーンのユーモアたっぷりの歌詞まで音楽的に幅広いが、その幅広さの中にいつも感じられるのはアメリカン・ミュージックの確かな手応えであり、この作品がフランクの写真集同様、彼のアメリカ論であると思わずにはいられない。
脚本・共同監督のルディ(ルドルフ)・ワーリッツァーは、ロバート・フランクの古くからの同志であり、映画では他に『断絶』(’71 モンテ・ヘルマン)、『ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯』(’73 サム・ペキンパー)、『ウォーカー』(’87 アレックス・コックス)などのシナリオを書いている。
ジュリアスに扮するケヴィン・J・オコナーは、『ペギー・スーの結婚』(’86 コッポラ)、『モダーンズ』(’89 アラン・ルドルフ)などで売り出した新鋭。エルモア役のハリス・ユーリンは舞台俳優として主に活躍しているが、映画のほうでも『ナイト・ムーブス』(’75 アーサー・ペン)、『スカーフェイス』(’84 ブライアン・デ・パルマ)などに出演している。ロック・ブルース・シンガー、トム・ウェイツはフランシス・フォード・コッポラに俳優として見出され、以来『アウトサイダー』(’83)、『ランブルフィッシュ』(’83)、『コットンクラブ』(’84)と立て続けにコッポラ作品に出演。その後『ダウン・バイ・ロウ』(’85 ジム・ジャームッシュ)でその個性的な演技に注目が集まった。そしてニュー・オリンズ・ロックのカリスマDr.ジョン、元ニューヨーク・ドールズのリーダー的存在だったデヴィッド・ヨハンセンなどが好演している。
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PROFILE〈ロバート・フランク Robert Frank〉
ロバート・フランクは写真界の大御所として、国際的にその名を知られている。ジャック・ケルアックの序文で飾られるフランクの写真集「The Americans」は、1958年に出版され、同時期にデビューしたウィリアム・クラインの「New York」とともに’60年代以降のアメリカ写真・アート界に大きな衝撃を与えた。
1924年、スイスに生まれ、1947年にアメリカに移り、それ以来ニューヨークを本拠地に活動しているフランクは以降、『プル・マイ・デイジー』(’59年)で映画監督デビューを果たす。写真展も、’51年のニューヨークでの共同出品展を皮切りに多く行われてきた。映画製作者としてのロバート・フランクの仕事ぶりはこれまで、日本では写真程知られる機会に恵まれなかった。しかし彼のキャリアは50年代末からの物で、まさに筋金入りといえる。デビュー作の『プル・マイ・デイジー』は28分の短篇だが、この作品はジョン・カサヴェテスの『アメリカの影』、シャーリー・クラークの『The Connection』とともに、ビート・ジェネレーションの洗礼を受けた先駆的な作品として高い評価を受けた。この後フランクは、短・中・長編を合わせ15本近くの映画を製作している。フランクの映画には、ケルアック、ギンズバーグ、そしてバロウズなどビート作家の友人の多くが出演しており、力強い感性を持った独創的な映像世界を展開している。
監督:ロバート・フランク
共同監督+脚本:ルーディ・ワーリッツァー
音楽監修:ハル・ウィルナー
キャスト:ケヴィン・J・オコナー/ハリス・ユーリン/トム・ウェイツ/ジョー・ストラマー/Dr.ジョン/アート・リンゼイ/デヴィッド・ヨハンソン/ビュル・オジュ
1987年/スイス・フランス・カナダ合作/カラー/91分/35mm/ワイド・スクリーン・サイズ
原語:英語
提供:オン・サンデーズ
配給:ケイブル・ホーグ