プロスペローの本

プロスペローの本 
シェイクスピア「テンペスト」より

PROSPERO’S BOOKS

復讐こそわが魂
魔法の織りなす壮麗なる夢想の宮殿

1991年12月21日-1992年2月28日

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作品概要

妖精が、怪物が、跋扈する不思議の島。
魔法の衣を纒った王プロスペローの
壮麗なる復讐の夢━。


『プロスペローの本』は、絢爛豪華な悪徳と様式美の世界を見事に構築した『コックと泥棒、その妻と愛人』で、大スキャンダルを世界に巻き起こしたイギリスの鬼才ピーター・グリーナウェイ監督の最新作である。
この映画は、ウィリアム・シェイクスピア最後の戯曲といわれている「テンペスト(あらし)」に材を取った復讐劇。グリーナウェイ版「テンペスト」の特筆すべき点は、プロスペロー自信が劇作家となって偉大なる復讐の夢を演出するという新趣向にある。

かつてミラノの大公だったプロスペローは、ヨーロッパから遠く離れた絶海の孤島に15歳になるミランダと静かに暮らしていた。12年遡る過日、二人はナポリ王アロンゾーと共謀した弟アントーニオに公国を奪われ、ミラノを追われたのだ。プロスペローはその長い歳月のなか、友人ゴンザーローが彼に託した24冊の魔法の本を読み耽り、偉大なる力を身に着けていた。遠いミラノを想って、島をルネッサンス風の小イタリア王国に築き上げた彼は公国を強奪した宿敵を倒す復讐劇の創作を始める。大嵐を起こして仇敵をおびき寄せ、架空の人物を登場させて復讐の道具にするなど、プロスペローは思うがままの世界を作り上げようと企むのだった・・・。

魔法を操るプロスペローという特異な主人公、美しい音楽を奏でる妖精エアリエルや化け物のように醜いキャリバンといった幻想的怪異的な登場人物、夢幻的な島の雰囲気など、シェイクスピアの表現する詩的想像力の豊かな世界を舞台化、映画化することは、さまざまな解釈が可能なだけに難しい作品とされてきた。
ピーター・グリーナウェイは、原作の持つ魔性、幻想性を彼ならではの“魔術”を操って、さらに奥深く、また、誰も体験し得なかった映像で表現することに成功したのである。
配役、撮影、美術、音楽、そしてハイヴィジョンによる編集等、どれをとっても他に類を見ない“芸術”の極みを実現させている。映画の新しい可能性を提示した『プロスペローの本』は、“90年代の『イントレランス』”と評しても過言ではないだろう。

始まりはグリーナウェイとギールグッドの出逢いからだった。イギリスを代表するシェイクスピア俳優として“サー”の称号を持つジョン・ギールグッド。1930年、26歳の時に初めてプロスペローを演じて以来「テンペスト」はギールグッドの当たり演目だった。そして映画で演じるシェイクスピアものの生涯最後の役としてプロスペローを演じることができればと考えていたという。「テンペスト」の映画化にあたって、プロスペロー役は是非ギールグッドにと思っていたグリーナウェイにとっては願っでもないことであった。彼はこの名優に敬意を表して、全ての台詞をギールグッドのナレーションの形に変えさせている。
それに端を発したグリーナウェイのアイデアはどんどん膨らんだ。
17世紀ジェイムズ朝演劇(ジャコビアン・ドラマ)の研究、原作にはない24冊の魔法の本の登場、ルネサンス期の彫刻たちがもし動き出したらというアイデア、そして絵画では表現できない幻想と魔法を人工的に映像化させること━ つまりハイヴィジョンによる編集・合成とペイントボックスによる電子絵画の作成━ など。

出演には、ミランダ役に『ロザリンとライオン』のイザベル・パスコ、魔法の子キャリバン役に英国パンク・バレエの旗手マイケル・クラーク、アロンゾー役に『メルシー・ラ・ヴィ』のミシェル・ブラン、ゴンザーロー役にベイルマン作品では有名なエルランド・ヨセフソン、また妖精シーリーズ役にいまヨーロッパで高い人気を誇るマルチ・アーティストのウテ・レンパー(主題歌も担当している)など一流どころが勢揃いした。
スタッフには、『コックと泥棒、その妻と愛人』組の撮影監督サッシャ・ヴィエルニー、美術ベン・ヴァン・オス、音楽マイケル・ナイマンのほか、黒沢明作品『乱』でアカデミー衣装賞を受賞したワダエミがプロスペローの魔法の衣のデザインと制作を担当していることも話題だ。またハイビジョン編集は、NHKの技術の総力を結集してほぼ一年に及ぶ作業が行われた。

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スタッフ・キャスト

監督:ピーター・グリーナウェイ
製作:キース・カサンダー
衣装:ワダ エミ
音楽:マイケル・ナイマン
撮影:サッシャ・ヴィエルニー
美術監督:ベン・ヴォン・オス
エアリアルの歌:セアラ・レナード

キャスト:サー・ジョン・ギールグッド/イザベル・パスコ/マイケル・クラーク/ミシェル・ブラン/エルランド・ヨセフソン/ウテ・レンバー

1991年/イギリス・フランス合作/126分/ヴィスタ/カラー
原語:英語
字幕:斎藤敦子

後援:ブリティッシュ・カウンシル
配給:ヘラルド・エース/日本ヘラルド映画

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