ポンヌフの恋人
Les Amants du Pont-Neuf
愛はひとを裸にする
1992年3月28日-1992年10月2日
光と音のスペクタクルのなか“裸の”恋愛をみつめにみつめる
天涯孤独で不眠症の大道芸人アレックス(ドニ・ラヴァン)。空軍大佐の娘で失恋の痛手と失明の危機のため家出した画学生ミシェル(ジュリエット・ビノシュ)。癒しがたい傷をかかえホームレスになった二人の新たな“ボーイ・ミーツ・ガール”、レオス・カラックスの「アレックス青春3部作」完結編だ。
場所はパリの真ん中、ポンヌフ橋。シテ島をまたぐセーヌ最古の橋の上で、すべてを捨てた孤独なホームレスが出会う純粋な恋。監督カラックスは、その“裸の”恋愛をみつめにみつめる。その一途な美しさ、炎のような燃焼、はかない壊れやすさ、失うことの不安、切なさ、いじましさ。誰もが経験するそんな感情を鮮烈な光と音のなかに描きあげる。
『ポンヌフの恋人』はまごうことなき恋愛映画でありながら、どんな甘さも妥協もよせつけず、エゴイスティックなまでの恋愛の本質をみつめる純粋非凡な恋愛論だ。
失意と闇からはじまり、息もつかせぬスピードで希望と生命へと疾走し、回転し、落下する。あまりにシャイで愛を告白できないアレックス、初恋の記憶に今なお生きるミシェル。二人が破局を乗りこえ、とことんまでこの愛を進んで行くさまは、切々と見る者の心に迫り、深い余韻を残すだろう。
カラックス=ビノシュ・コンビの最新作
3年の年月を経て、ついに完成!!
“90年代シネマの旗手”として世界の期待と注目をあつめる鬼才レオス・カラックス。『存在の耐えられない軽さ』で一躍スターの座を不動にしたフランス映画界の“女神”ジュリエット・ビノシュ。このコンビによる待望久しい新作が3年の年月を経て、ついに完成した!
フランス映画史上最大のオープンセット(南仏モンペリエのパリの町並みを再現)、巨額の製作費と相次ぐ破産など、早くから全仏マスコミの話題となり完成前から伝説化した『ポンヌフの恋人』。その出来は期待にたがわず「カラックスの最高傑作」との声が高く、パリでは封切り2週間で14万人という驚異的な大ヒットを記録中だ。
ボウイからコダーイ、リタ・ミツコまで次々流れる絢爛たる音楽、パリの夜に打ち上がる花火のまばゆい光と色彩。祝祭のセーヌを疾走する水上スキー、火吹き芸人の炎、めらめらと萌えるポスター。ポンヌフのみならずパリの街々の表情を生き生きと捉えながら、前作『汚れた血』を凌駕するぜいたくなスペクタクルで観客の目を圧倒する。
2度の撮影中断を乗り越えて
「ルポルタージュのようにすばやく撮影したい」という当初の監督の予定を大幅に逸脱し、2度の撮影中断、遅れ続けるスケジュール、膨らむ製作費。この悪夢に決着をつけたのが『カミーユ・クローデル』の辣腕プロデューサー、クリスチャン・フェシュネール。
この長期間、アレックス役のドニ・ラヴァン、脚本段階から関わり3年をこの作品に捧げたジュリエット・ビノシュはじめ、撮影のエスコフィエ、美術のヴァンデスティアン、編集のケティエら常連スタッフが仲間意識でカラックスを支え受難の日々を乗り越えた。
なお、若い二人の保護者役というべきハンスにはドイツの著名な舞台演出家クラウス=ミヒャエル・グリューバー(映画初出演)を起用、渋い演技で厚みを加えた。
ものがたり
パリで一番古く美しい橋“ポンヌフ”で暮らす天涯孤独な青年アレックス(ドニ・ラヴァン)は、恋の痛手と生涯治る見込みのない目の病で絶望的な放浪の毎日を送っている空軍大佐の娘ミシェル(ジュリエット・ビノシュ)に出会う。二人は互いに絆を深め、革命200年祭の夜に華々しく打ち上げられう花火の下で恋に落ちる。だがしばらくして両親の捜索願いから眼病の治療法が発見されたことを知り、ミシェルの心は揺れる。彼女を失う不安でいっぱいのアレックスの心を引き裂くかのように、やがて二人の恋に破局が訪れそれぞれの世界へと戻っていく。季節はうつろい、視力を回復したミシェルは自らの手で終止符を打った恋への未練を断ち切れず、放火の罪で服役中のアレックスの前に遂に現れる。新たな愛を誓いあった二人は、やがて訪れるクリスマスの晩に、思い出のポンヌフ橋での再会を約束する。
雪が降りしきるその夜、シャンペンの栓が飛び交う橋の上・・・。だが再会の喜びも束の間、ミシェルの一言に傷ついたアレックスは彼女を道連れに氷のようなセーヌへ飛び込んだ。水の中で、しっかり抱き合う二人の前を、老夫婦の船が救いの手を差し伸べるように横切った。
「ずっと果までいくんだよ。」「私たちも・・・」二人は二度と再び離れないと、にっこり微笑みあった。
★ポンヌフ PONT-NEUF
メトロ7号線PONT-NEUF下車。シテ島の端をまたぐセーヌ最古の橋、建造後約400年。前方に凱旋門とエッフェル塔を臨み、後方にはノートルダム、左岸にカルチェ・ラタンそして右岸にレアールというパリの“ヘソ”に位置する。アーチ型橋脚、半円形の突き出し、アンリ4世騎馬像などの特徴ある名橋。ルノワールが描きクリストが梱包しブレッソンが『白夜』の舞台とした橋である。
監督+脚本:レオス・カラックス
撮影監督:ジャン=イヴ・エスコフィエ
製作総指揮:クリスチャン・フェシネール
美術監督:ミシェル・ヴァンデスティアン
キャスト:ジュリエット・ビノシュ/ドニ・ラヴァン/クラウス=ミヒャエル・グルーバー/ダニエル・ビュアン
1991年/フランス/ヴィスタサイズ/125分/35mm/カラー
原語:フランス語
字幕:松岡葉子
提供:朝日放送/JSB日本衛星放送/mitsumoto/アミューズ/パイオニアLDC/ユーロスペース
イメージソング:大貫妙子「悲しみの足音」
配給:ユーロスペース