ベイビー・オブ・マコン

ベイビー・オブ・マコン 

THE BABY OF MACON

1659年イタリア
フィレンツェの名家の末裔コシモⅢ世は
奇跡の誕生劇に何を見たのか!?

1993年12月11日-1994年2月10日

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作品概要

1989年『コックと泥棒、その妻と愛人』、1991年『プロスぺローの本』、
そして1993年『ベイビー・オブ・マコン』
鬼才ピーター・グリーナウェイ監督が仕掛ける新たな挑戦状!
◆愛欲、憎悪、復讐といった人間の業を、絢爛たるグランドオペラのごとく壮麗かつ華麗な映像美で描いて、つねに観客の知性を刺激しスキャンダラスな話題を提供し続ける20世紀最後の映像錬金師ピーター・グリーナウェイ。『コックと泥棒、その妻と愛人』で飽食の現代社会を<カニバリズム>という形で風刺、『プロスぺローの本』ではシェイクスピアを<脱構築>し、全篇魔術的な世界を斬新な映像で展開、新しい映像の可能性を提示したグリーナウェイが、次に仕掛ける罠とは?

壮大なるタブーに挑戦! 名家メディチ家の末裔コシモが見た奇跡の誕生劇とは?
◆『ベイビー・オブ・マコン』の舞台となるのはバロック最盛期の17世紀のイタリア。ルネサンス時代隆盛を誇ったフィレンツェの名家メディチ家の末裔コシモ・デ・メディチ3世が、目前で演じられる宗教劇の舞台に乱入し、虚構(演劇)と現実(観客関)の間を往復する。私たちはコシモと共に「夢」と「うつつ」の間の世界へと誘われる。
◆1689年、イタリアのある都市。町の大劇場で「ベイビー・オブ・マコン」と題された芝居が、いままさに上演されようとしている。メディチ家の末裔コシモ一行もやってきて最前列に席を陣取っている。芝居はこんな内容だ。世の中が飢餓に苦しむ時代に、ある一人のグロテスクな妖婦が怪物を孕んでいると予言される。しかし生まれてきたのは、素晴らしく美しい男の赤ん坊だった。この出来事は、最悪の事態を恐れていた人々を狂喜させ、奇跡の子と崇められる。この子を利用して金儲けをしようと企む赤子の姉は、自分がこの子を産んだと言い出す。赤子はキリストの再来で、自分は処女懐胎したマリアだというのだ。彼女の主張は度を過ぎ、教会の逆鱗に触れる。こうして無垢なる赤子をめぐって、対立はエスカレートしていく・・・。
◆赤児の誕生とその生涯は、劇中劇の形で演じられる。芝居が進むにしたがって、役者と役者が演じる役との区別、観客と劇中の群衆との区別がはっきりしなくっていく。観客のはずのコシモは、舞台に上がって劇中の出産シーンに立ち会い、赤児の悲運を群衆の役者とともに体験する。また赤児の姉を演じる女優は、劇中の屈辱を舞台の外でも受け、観客自身も本物の殺人と拷問の共犯者になっていく。

「SEX」と「死」こそ、映画の最大のテーマである。
◆芝居が現実の生活の中に入り込んでいく様は、まるでテレビのワイドショーを観るようなリアルさで、現代に住む私たちの前に迫ってくる。80年代に流行した劇中型犯罪─三浦和義事件、豊田商事事件などを彷彿とさせる場面が繰り広げられる。特にクライマックスには想像を絶するスキャンダラスなシーンが用意されている。それは赤児の姉を演じる女優が犯罪者として祭り上げられ、姦死刑処せられる場面だ。刑場がわりのベッドに押さえつけられた女が、町の男たちに次々と犯されるその一部始終を、カーテン越しに私たちは延々と目撃させられるのだ。『ベイビー・オブ・マコン』は観る側の私たちのアイデンティティをも揺さぶり、世界中にセンセーションを巻き起こすことだろう。
◆グリーナウェイは語る
「『ベイビー・オブ・マコン』は幼児搾取、ひいては無垢なる心を持った人々が利用され痛めつけられる事の理不尽さについての物語です。20世紀末の今日、新聞には虐げられ殺される子供たちの事件がたくさん報道されています。特にショックを受けるのは宣伝やメディアに子供を利用する事です。私はこの疑問を現代劇ではなく観客が感情的にならずにこの問題をじっくりと考えられるように17世紀という時代に舞台を設定しました。この時代、教会は(現代のTVや広告と同様の)絶大な影響力を持っていたからです。この映画は、観客が観客でなくなっていく過程を見つめながら、自分を省みる事の必要性をといかけています」

教会内にセットを建造。壮麗なる映像に酔う。
◆キャストには司教の息子を演じるレイフ・ファインズ(近作『嵐が丘』でジュリエット・ビノシュと共演した新鋭俳優)を始めとして、イギリスの才能ある舞台俳優が多数出演している。またスタッフは『コックと泥棒、その妻と愛人』『プロスぺローの本』とほぼ同じチームが組まれた。しかし音楽に関しては、おなじみのマイケル・ナイマンに代わり既成の教会音楽(H・パーセル、C・モンテヴェルディほか17世紀に活躍した作曲家の作品)が使われ、オランダとドイツの音楽家および合唱団が演奏に携わった。映画の舞台になる、劇場を中心とした町のセットは、ドイツに存在する教会のカテドラル内に建造された。


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スタッフ・キャスト

製作:キース・カサンダー
製作総指揮:デニス・ウィグマン
監督+脚本:ピーター・グリーナウェイ
撮影監督:サッシャ・ヴィエルニー
美術:ベン・ヴァン・オス/ヤン・ロルフス

キャスト:ジュリア・オーモンド/レイフ・ファインズ/フィリップ・ストーン/ジョナサン・レイシー/ドン・ヘンダーソン

1993年/イギリス=ドイツ=フランス合作/122分/ドルビー・ステレオ
原語:英語
字幕:齋藤敦子


配給:ヘラルド・エース/日本ヘラルド映画

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