時の翼にのって
ファーラウェイ・ソー・クロース!
FARAWAY SO CLOSE!
『ベルリン・天使の詩』から6年。
・・・そして、再び天使は舞い降りた。
1994年5月7日-1994年7月29日
★1993年カンヌ国際映画祭グランプリ[審査員大賞]受賞
ヴェンダースが愛を込めて贈る
儚くも、美しいファンタジー!
1987年のカンヌ国際映画祭監督賞を受賞し、世界中で大ヒットとなった『ベルリン・天使の詩』から6年─。ベルリンの“壁”が崩壊した後の新たな混乱の地上に降りてきたもう一人の天使の物語が語られる時が来た。’93年のカンヌ国際映画祭グランプリ(審査員大賞)に輝いたヴィム・ヴェンダース監督最新の本作は、監督がメッセージ性豊かに、新たに臨んだ美しいファンタジーである。
今回の主人公は、前作ののラストで天上界に一人取り残された天使カシエル。人間の目で世界を見たいと願った彼は、一人の少女を救ったことで願いが現実のものとなる。しかし、地上での彼の存在は予定外のものだった。カシエルが地上に留まることを許されている時間はあまりにも短い。限られた時間と混沌とした世界の直中に一人放り出されたカシエルに、“時”は敵として存在してくる。
’90年代ベルリン─新たな“天使の物語”
ヴェンダースの集大成そして新たなる挑戦!
快楽と暴力が時の掌上で虚しいゲームを続けている世界にあって、カシエルは実に無力な存在だ。彼の踊るような好奇心、歓びも、自らの純真無垢さゆえに、苦しみとなり堕ちていく。ミハエル・ゴルバチョフが引用したことのあるドストエフスキーによる一文、「人間の生命の不思議はその人が生きている事実に在るのではなく、その人が何の為に生きているいるかに在る」─このテーマをヴェンダースが映画に用いたように、与えられた時間の中で、人は何をすればよいのか、よりよい方向に変えるために人は何が出来るのかという根源的なテーマのうちに、カシエルの苦悩と救済が描かれている。
豪華キャスト、一流アーティストが結集
至福的映像の美しさと、音楽に、酔う!
主人公カシエルには、前作でも同じ役えお演じ、ドイツ演劇界を代表し、エルンスト・ルビッチ賞等、数々の受賞歴を持つオットー・サンダー。パリ・コレクションのモデルとしても活躍する彼だが、ピュアな眼差しを備えた彼のイノセントな資質は本作の大きな魅力となっている。そして、前作の出演者であるブルーノ・ガンツ、ピーター・フォーク、ソルヴェイグ・ドマルタンも同役で登場。新たなキャストとしては、カシエルを静かに見守り支える天使ラファエラに、『まわり道』『パリ・テキサス』に続いてこれが3度目のヴェンダース映画出演となるナスターシャ・キンスキー。時を支配する堕天使エミット・フレスティ(“TIME ITSELF”=時そのものを逆読みした名)役『プラトーン』『最後の誘惑』『BODY』でマドンナとも共演した演技派ウィレム・デフォーが扮し、初参加のヴェンダース映画で圧倒的な存在感を見せている。また。ミハエル・ゴルバチョフ前ソ連大統領が自身の役で特別出演しており、既に新聞・TVなどで話題となった。その他、ヴェンダースの『夢の涯てまでも』でも音楽を提供していたルー・リードや、『ベルリン・天使の詩』で撮影監督を務めたフランスの伝説的ベテラン・カメラマン、アンリ・カルカンが出演しているのも見逃せない。
撮影は『秋のドイツ』『ヴェロニカ・フォスの憧れ』といったライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の作品で知られるユンゲン・ユルゲス。前作でも大きな魅力だったモノクロとカラーの映像が交差するスタイルを跳襲しつつ、前作より遥かに比重の高いカラー部分の冴えた色彩設計で、圧倒的映像美を見せつける。また、サウンドトラックのためにU2、ルーリード、ニック・ゲイヴ、ローリー・アンダーソンらそうそうたるメンバーがオリジナル曲を書き下ろしている。
尚、本作では『ベルリン・天使の詩』に老詩人ホメロス役で出演していたドイツ演劇界の重鎮クルト・ボイスに捧げられている。
■ストーリー
『ベルリン・天使の詩』で天使のダミエルは、空中ブランコのアーティストのマリオンに恋して人間と成った。彼の友人カシエル(オットー・ザンダー)は、姿が見えぬまま少しだけ悲しい気持ちで一人取り残され、勝利の天使のモニュメントの肩に座って時のない永遠の流れに身を任せている。
6年後のベルリン─。多くのものが揺れ、壊され、以前とは違った形で融合している。カシエルは、壁のない街ベルリンの街と人に目をやり、耳を傾ける。しかし、変わり行く人々に手を差し伸べようにも、彼は語ることすら出来ない。人間の人生にも歴史の流れにも口出しできないのだ。カシエルは天使の彼女、ラフェエラ(ナスターシャ・キンスキー)と共に、ベルリンの街を見降ろしながら、つぶやく。─時が出現した時・・・見張り役になるとは思いもしなかった─と。
ある日、高層ビルのバルコニーからバランスを崩し落下した幼い少女ライザ(アリーヌ・クライェフスキー)を救ったカシエルは思いもかけず、地上の人となる。彼は他の人と同じ様に、虚ろいやすい、命に限りのある存在になったのだ。
ダミエルはピザ屋を経営しながら、マリオン(ソルヴェイグ・ド・ドマルタン)と娘のドリア(カミール・ポンタブリー)と幸せな生活を送っていた。しかし、カシエルには安定した生活など想像も出来なかった。彼には、まるで影のように、気がつけば常に堕天使エミット・フレスティ(ウィレム・デフォー)の姿があった。エミットはカシエルの短い人生を具体化する天使でもあるのだ。カシエルはベルリンの街を歩き回る。人間となってからほんの数日しかたっていないにもかかわらず、彼は人生は複雑に絡み始めていた。彼は自分の無力さに嘆き悲しむが、90年代のベルリンに舞い降りてきた不安定な天使はアレキサンダー広場で転倒するだけでは終わらない。
重い過去の歴史がカシエルの前で交錯する─。彼の周りには、純粋で生きられなくなったこの時代の、無慈悲な現代人が徘徊する。しかし、一方で、さりげなくも彼を支えるルー・リードや、ピーター・フォークにも出会うのだが・・・。
やがて、カシエルは、昔別れた妹を探してアメリカからドイツへ戻った男のもとで働くが、カシエルが自ら求め得た命と自由を、危機に陥し入れるかもしれない事件に巻き込まれていく・・・。
製作+監督:ヴィム・ヴェンダース
製作総指揮:ウルリヒ・フェルスベル
プロダクション・スーパーバイザー:ミヒャエル・シュヴァルツ
台詞:ウルリヒ・ツィーガー
脚本:ヴィム・ベンダース/ウルリヒ・ツィーガー/クヒアルト・ライティンガー
キャスト:オットー・ザンダー/ピーター・フォーク/ホルスト・ブッフホルツ/ナスターシャ・キンスキー/ハインツ・リューマン
/ブルーノ・ガンツ/ルー・リード/ウィレム・デフォー/ミハイル・ゴルバチョフ
1993年/ドイツ映画/モノクロ&カラー/147分/ヨーロッパ・ヴィスタ
提供:アミューズ/Little Magic/テレビ東京
後援:TOKYO FM
配給:ギャガ・コミュニケーションズ