小便小僧の恋物語

小便小僧の恋物語 

Manneken Pis

フランドルの街角で生まれた、
ほんの少し平凡で、ほんの少しアヴァンギャルドな愛。

1996年7月6日-1996年8月2日

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作品概要

ベルギーから届いた慎ましやかな恋

◆手にとれば壊れてしまいそうで、引き出しの奥にしまっておけば忘れてしまうほどに慎ましやかな恋。ガラス細工のモビールがかすかに音をたて触れ合うかのように、小便小僧(マネキン・ピス)ハリーと路面電車の女運転士ジャンヌの恋は生まれた。
◆「フランダースの犬」を生んだベルギーの首都ブリュッセルを縦横無尽に走る路面電車を舞台に進行する、誰も知らない、誰も気づかない恋の物語。
◆路面電車の窓を打ち続ける絹糸のような雨、季節はずれの海岸、青白む夜、月あかりをキャンドルにふたりが過ごした一度だけの晩餐。そして金色の靴。それらが全て幻であったかのように、薄い光だけが残るふたりの恋の結末。
◆映画はハリーとジャンヌの古典的な“ボーイ・ミーツ・ガール”で始まり、その平凡な展開が純粋な愛を際だたせる。過去に受けた傷から決して“愛してる”のひと言を口にできなくなってしまったハリーと、そんなハリーを理解しようとも結局傷つけてしまうジャンヌ。映画は、想いを胸に秘めるふたりの不器用な恋のゆくえを、過剰な愛が溢れだす悲劇的かつ幸福な終末に向かって丹念に描いていく。
◆『小便小僧の恋物語』は、ブリュッセルにある観光名所マネキン・ピス(小便小僧)像をモチーフに、透明感に満ちた斬新な映像と近未来的にサイバーでノスタルジックな不思議な時代設定で観客を魅了する。監督の長篇処女作であるこの映画は、アントワープやブリュッセルといったベルギーの都市部を中心に静かなロングランを続け、その後ヨーロッパ全土で暖かく迎えられた。

そして新しい才能
◆監督のフランク・ヴァン・パッセルは、この作品で’95年カンヌ国際映画祭批評家週間部門で若き才能に与えられる青春賞(プリ・ドゥ・ラ・ジュネス)を受賞、また今年2月に開催されたゆうばり国際・冒険ファンタスティック映画祭で審査員特別賞を受賞するなど、停滞ぎみのヨーロッパの映画状況の中にあって、新しい才能として注目を浴びている。
◆小便小僧ならぬ主人公ハリーを演じるのはフランク・ヴェルクライセン。美形でありながら『ポンヌフの恋人』のドニ・ラヴァンを彷彿させ、静かな佇まいのなかにみせる存在感は素晴らしい。フレームのなかを歩くだけで、あるいは座っているだけで“映画”を感じさせる魅力を持ち、今後の活躍が期待される。
◆そして路面電車の運転士ジャンヌの、強さと脆さが同居した複雑な女の恋心をみごとに表現するのは、アンチュ・ドゥ・ブック。彼女は動くほどにその魅力を発揮する天性の映画女優といえるであろう。
◆ジャンヌの気持ちの移り変わりを映す鏡のような役割を果たす衣装にも注目したい。彼女が次々と着替える“ちょっとダサくてバナル(平凡)”なスタイルは、最先端のファッションのキーワードを共有し、登場するダンス・ホールやアパートメントのインテリアにもつながる。そして緻密にコントロールされたアートディレクションは、これみよがしではないさらりとした今の気分を表現している。また、ハリーとジャンヌの繊細な感情の高ぶりと共鳴する音楽は、ベルギーを代表するロック・バンド、ノールトカープが担当。ファッション界の〈アントワープ6〉などの出現ともあいまり、ベルギーから飛び出した新しい才能の数々がこの映画に集結し、観る者に新鮮な驚きをもたらす。

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スタッフ・キャスト

製作:ディルク・インペンス
監督:フランク・ヴァン・パッセル
脚本:クリストフ・ディリックス
撮影:ヤン・ヴァンカイリ
音楽:ノールトカープ

キャスト:フランク・ヴェルクライセン/アンチュ・ドゥ・ブック

1995年/ベルギー/カラー/90分/ドルビーSR
字幕:石田泰子

協賛:フランダース政府文化局
後援:ベルギー大使館フランダース代表部
配給:ユーロスペース

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