愛の悪魔 フランシス・ベイコンの歪んだ肖像
LOVE IS THE DEVIL STUDY FOR A PORTRAIT OF FRANCIS BACON
1999年3月13日-1999年4月16日
アーティストとその恋人の“愛の力学”
本作は、ピカソと並ぶ20世紀最大の画家フランシス・ベイコンの生涯の中、その作品のモデルで愛人だったジョージ・ダイアーとの関係に焦点を当てて描いている。ベイコンのマゾヒスト的な性癖の対極には、青年ダイアーに向けるサディスト的一面があり、その悪魔的な愛の関係を、盗みに入ってきたダイアーがベッドに誘う出会いから、パリの大展覧会のオープニングにホテルでダイアーが自殺するまでを、単なる事実の再現ではなく独自の解釈と現代的な感覚で描いている。監督は映像派ジョン・メイブリィ。彼はビデオで磨いたデジタル・テクニックはあえて使わず、60年代のベイコンが頻繁に出入りした酒場やアトリエを忠実に再現し、彼特有の歪んだ絵画的なスタイルを巧みに映像に取り入れ、異色の画家の内なる悪魔を描いている。
フランシス・ベイコン(1909-1992)
1909年10月28日ダブリン生まれ。父親は競走馬の調教師で、自分は1626年に死んだ哲学者フランシス・ベイコンの末裔だと公言していた。16歳で家を出て、18歳の頃、ピカソの個展を見て画家になる決心をする。25歳、初の個展を行うが不成功に終わる。27歳、国際シュルレアリスト展に出品するが落選。36歳「ある磔刑の下の人物のための習作」を制作し世間に大きな衝撃を与え、以後画家として認められ世界各地で個展を行う。53歳、テイト・ギャラリーで自作の大回顧展。前夜愛人のピーター・レイシーがタンジールで死去。64年55歳、後に愛人となるジョージ・ダイアーと出会う。71年62歳、パリのグラン・パレで大回顧展。ダイアー、パリのホテルで自殺。(『愛の悪魔』はダイアーとの出会いから死別迄の7年間を描いている)83年74歳、東京、京都と、名古屋で展覧会が開催される。92年83歳、4月28日、旅行中にマドリッドで心臓発作により死去。
監督+脚本:ジョン・メイブリィ
製作:キアラ・メナージュ
撮影:ジョン・マティエソン
美術:アラン・マクドナルド
衣装:アニー・シモンズ
音楽:坂本龍一
出演:デレク・ジャコビ/ダニエル・クレイグ/ティルダ・スウィントン
1998年/イギリス/90分/ヴィスタ/ドルビーSRD
字幕:神代知子
宣伝協力:樂舎
配給:アップリンク