ハイ・アート
high art
あなたが、すべてだった
1999年5月29日-1999年6月25日
シャッターが刻むふたりだけの愛の記憶
仕事への野心、かけがいのない愛、成功への代償・・・
ニューヨークのフォト・マガジン「フレーム」で憧れの編集の仕事に就いた24歳のヒロイン、シド。かつて写真家として輝かしい成功を収めながら、作品発表をめぐるごたごたに巻き込まれ、突然姿を消してしまったルーシー。ささいな偶然がふたりを引き合わせたときから、彼女たちを思いがけない運命へとみちびく美しい愛の物語が始まる。
アーティストたちに厳しいプレッシャーを強いるニューヨークのアートビジネスの世界。『ハイ・アート』は、異なる立場からその世界に関わるふたりの女性をリアルに描き出した。
プライヴェート・フォト─愛する人を写真に撮る、そして撮られるという親密な関係
「フレーム」誌のカヴァー写真を飾ることは写真家にとって大きな成功を意味している。編集アシスタントに昇格したばかりのシドは、ルーシーをもう一度アートの表舞台に復帰させるという野心に燃え、恐る恐るボスに相談する。ビジネスとして写真を撮る気のないルーシーにとって、シドの提案は気乗りしないものであったが、シドを自分の担当編集者にすることを条件にカヴァーの仕事を引き受ける。初の大仕事に大抜擢され夢見心地のシド。しかし、事態はまったく彼女の予期しない方向へ滑り出す。ルーシーが今、写真に撮りたいもの、それはシド自身だったのだ素直な感情から愛する者を写真に撮ること、それがルーシーの写真の原点だった。
『ハイ・アート』の物語は、80年代以降の大きな潮流であるプライヴェート・フォトの火付け役となったナン・ゴールディン、ジャック・ピアソン、ラリー・クラークといったニューヨークの写真家たちの世界からインスパイアされて描かれている。写真を撮る者と撮られる者の親密な関係。その極めて個人的な私写真が“ハイ・アート(高尚な芸術)”として商業的に祭り上げられる皮肉。そして、シドが迎える結末のように、ときには人生を変えてしまうほどの力を持つ「写真」というものを、これほど鋭くあぶり出した作品はかつて存在しなかった。
監督+脚本:リサ・チョロデンコ
撮影:タミー・ライカー
音楽:シャダー・トゥ・シンク
美術:バーナード・ブライス
出演:ラダ・ミッチェル/アリー・シーディ/パトリシア・クラークソン/アン・ドゥオン/ビル・セイジ
1998年/アメリカ/101分/ヴィスタ/カラー
字幕:松浦美奈
協賛:オペーク/アクアガール
配給:キネティック