ポーラX
PolaX
レオス・カラックスの新たな伝説
1999年10月9日-2000年2月18日
ぼくらは深く、深く、もっと深く降りてゆかねばならない。
─ハーマン・メルヴィル
[なぜならば、激動の最果てに達すると、人間の魂は、溺れかけた人間そっくりだからだ。自分が危殆に瀕していることはよく分かっている。危殆の原因もよく分かっている。なのに、やはり海は海であり、溺れかけた人間は溺れるしかない。]
●『ポンヌフの恋人』から8年、レオス・カラックスの壮絶過激な衝撃作
初の原作もの、しかも発表当時「狂気の書」とまで評されたハーマン・メルヴィルの問題作「ピエール」。虚飾の人生の中で真実を渇望する新進小説家ピエールが衝撃的に出会う黒髪女イザベル。姉と弟かもしれぬ二人が愛の生贄さながら魂の暗闇を下降し、運命の奔流に溺れていく壮絶過激な純愛物語だ。
真実を求め絡み合う二人の激しく疾走する愛を、カラックスは今までにないスケールと強烈な闇のインパクト、そして洗練された映像でぐいぐい引き込み、描ききる。
冒頭のコラージュ映像から謎めいたクレーンショットへ。美しい母と婚約者、満ち足りた生活を全て捨て不安定な錯乱の世界へ突き進むピエール。神秘的な夜の告白。疾走し狂乱し旋回するオートバイ。闇の中の官能的ベッドシーン。炸裂するパーカッション。“血の河”に溺れる恐ろしい夢。
濃密でエモーショナルな映像と音、破滅へ向かう主人公を見つめる仮借ない視線は、新たなカラックス伝説を生むだろう。
●メルヴィル文学を現代的に読み直し、映画化に全身全霊を傾けた新たな金字塔
「アレックス3部作(『ボーイ・ミーツ・ガール』『汚れた血』『ポンヌフの恋人』)」後の新たな出発となった本作は95年にやっと日・仏・独・スイスの合作体制で製作スタート。製作中のコードネーム“Pola X”はは原作の仏題(Pierre ou les ambiguites)の頭文字に解かれぬ謎のXをつけたものだが、そのまま公開題名となった。「白鯨」で知られる文豪メルヴィルの150年前の小説「ピエール」をかねてから愛読してきたカラックスは、泥沼のユーゴ内戦など今世紀の文脈でアクチュアルに、また自分自身の物語として現代的に読み直す。
監督:レオス・カラックス
原作:ハーマン・メルヴィル「ピエール」
音楽:スコット・ウォーカー
出演:ギヨーム・ドパルデュー/カテリーナ・ゴルベワ/カトリーヌ・ドヌーヴ/デルフィーヌ・シュイヨー
1999年/フランス・ドイツ・日本・スイス合作/カラー/134分/ドルビーSRD+DTS
提供:アミューズ/デジタル・メディア・ラボ/テレビ東京/電通/ユーロスペース
配給:ユーロスペース