非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎
IN THE REALMS OF THE UNREAL : THE MYSTERY OF HENRY DARGER
孤高のアウトサイダー・アーティスト、ヘンリー・ダーガーの
ミステリアスな生涯と作品世界に迫る異色のドキュメンタリー
2008年3月29日-2008年4月18日シネマライズ
2008年4月19日-2008年6月20日ライズエックス
2008年6月28日-2008年8月8日ライズエックス
2011年8月13日-2011年9月16日シネマライズ
ヘンリー・ダーガー(1892-1973)・・・・・・・・・・
親類も友人もなく、雑役夫として働いた病院と教会のミサを行き来するだけの貧しい生活を送った孤高のアウトサイダ-・アーティスト。身寄りもないまま1973年にシカゴでひっそりと息を引き取った後、40年間を孤独に暮らしたアパートの部屋から「非現実の王国で」と題した15,000ペ-ジを超える小説の原稿と数百枚の挿絵が発見された。孤独の中にたてこもり、妄想を綴り、生涯をかけて描いた作品は、死後、急速に評価を得て、今、もっとも注目を浴びる話題のアーティストでありながら、その生涯はベールに包まれている。日本でも、1993年に世田谷美術館で開催された「パラレル・ヴィジョン」展で初めて紹介されて以来、圧倒的な人気を集めている。
孤高のアウトサイダー・アーティスト、ヘンリー・ダーガーのミステリアスな生涯と作品世界に迫る異色のドキュメンタリ-
ダーガー自身の写真は、知られているだけで3点しかなく、もちろんホームビデオもなければ、生前の彼を知る人間もほとんどいなかった。そもそも、彼の名字が「ダーガー」であるのか「ダージャー」と発音されるべきなのか、それすら定かではない。アカデミー賞も受賞したことのある監督ジェシカ・ユーは、長期にわたって入念なリサーチを行い、大家であったキヨコ・ラーナー、アパートの住人、教会の合唱団の男の子ら、実際にダーガー本人を知っていた人たちによる証言や取り壊される前に2度にわたって撮影した生前の部屋、自伝や作品からの引用なども巧みに織り交ぜて、伝説化するダーガーの生涯と創作の秘密を丹念に炙り出す異色のドキュメンタリーを完成させた。
動く(!)ヴィヴィアン・ガールズが誘うダーガーの妄想世界
圧巻は、ダーガーの孤独な現実を伝えるドキュメンタリーと並行して挿入されるアニメーション。残された「非現実の王国で」の絵の中の要素だけを丹念に拾い出し、2年の歳月をかけて制作され動き出したヴィヴィアン・ガールズ。ある時は荒れ狂う空の下で陽気にはしゃぎ、ある時は兵士と戦い、またある時は翼を持った幻想的な生き物に助けられる少女たちは、ダコタ・ファニングによるナレーションによって命を吹き込まれ、観る者を興奮と彩りに満ちたダーガーの妄想の世界へと誘う。
「非現実の王国で」・・・・・・・・・・
正式なタイトルは「非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子供奴隷の反乱に起因するグランデコ─アンジェリニアン戦争の嵐の物語」。ダーガーが生涯をかけて書いた15000ペ-ジと数百枚の挿絵から成り立つこの物語を読破した者はほぼ皆無といわれているが、恐らくは史上最も長い壮大な叙事詩。人間離れした能力を備えた邪悪なグランデリニアンから子供たちを救うべく立ち上がる7人の無垢なる少女たち、ヴィヴィアン・ガールズの壮絶な闘いと功績の物語が綴られている。不思議な歓喜に満ちた楽園と凄惨な戦場が隣り合わせの無限の異空間の中で、多くの場合、少女たちは裸で、しかも男性器をつけ見る者を幻惑する。
監督:ジェシカ・ユー
ナレーション:ラリー・パイン/ダコタ・ファニング
プロデューサー:スーザン・ウエスト
アニメーション・プロデューサー:カーラ・ヴァロウ
音楽:ジェフ・ピエール
2004年/アメリカ/82分/カラー/アメリカン・ビスタ/SRD
字幕翻訳:石田泰子
配給:シネマライズ