七夜待
彩子30歳
日常から離れ、タイで過ごした七つの夜
古式マッサージに触れ、癒されながら
新しい自分に出会う物語
2008年11月1日-2008年12月12日
衝撃のデビュー作『萌の朱雀』から10年。
『殯の森』でカンヌ・グランプリ受賞後、
新たなステージに立った河瀨直美監督最新作
長谷川京子主演
言葉も通じない、自分を理解してくれる人もいない、
そんな異国の地で過ごした七つの夜。
タイ古式マッサ-ジを通して異国の文化や人々に心とからだで触れ合い癒されながら30代を迎えた一人の日本人女性が、異国で知った新しい自分は
どんな表情をしていたのか?
舞台を故郷・奈良からアジア・タイへ移し、新たなステージに立った河瀨直美監督最新作。史上最年少カンヌ映画祭カメラドール受賞を果たした衝撃のデビュー作『萌の朱雀』から10年。『殯の森』でカンヌ・グランプリ受賞後、待望の新作が誕生した。
日常を離れ、バンコクの南、サムットソン・クラームに降りたった彩子。しかし、ホテルに向かうはずのタクシーが辿り着いたのは混沌とした森の中。うっそうと生い茂る緑が美しい森と静かに水をたたえる川のほとりで出会ったのは、伝統的な高床式の小さな家に暮らすタイ人母子。そこにはフランス人の青年グレッグも同居していた。
言葉が通じない、知る人もいない、ここがどこなのか分からない。癒されるはずの場所でタイの湿気だけがまとわりつき、不安と苛立ちから心と身体で衝突する彩子は、やがてタイ古式マッサージに触れ、濃密な自然に包まれて見知らぬ人々と七つの夜を過ごす。
長谷川京子×河瀨直美
異質コラボから生まれた等身大でリアルな女性像
河瀨監督から主演・長谷川京子に毎朝渡される一枚のメモ。それはその日撮影する“行動”だけが記され、それ以外の台詞や相手とのやり取りなどは自分自身で“演じ”ていく。タイ人の母親と4歳の息子(実際の親子)。タイ人タクシードライバー。袈裟を着たフランス人。異国の俳優5人は自分の行動しか知らず、言語が異なるだけでなく、お互いの関係性や物語のゆくえも知らされず、朝、それぞれに渡された一枚のメモだけで、相手と対峙する。こんな体験は初めてと語った長谷川はこの等身大の女性を体当たりで演じ、局面ごとに見せる豊かな表情と新鮮なリアクションで30代女性の心の動きと身体の美しさをリアルに表現し、女優としての新境地を拓いた。
滞りを流してくれたタイ古式マッサージとの出会い
2人ヨガのような形式で、重力を利用しながらお互いに自分の体重をかけあい、筋をのばしていく古式マッサージは、からだを本来の力強さに導く要素があるとされる。異国の地で不安と苛立を抱える彩子にタイ人が教えてくれたマッサージは、身体だけでなく心の頑さもほどき、滞っているものを流していくようにゆったりと美しいリズムで映し出され、幻想的で心地よい世界に誘っている。
河瀨監督本人が「トライ」だったと語る本作は、これまで一貫して映画の舞台にしていた生まれ故郷・奈良から初めて、異国のタイに舞台を移し、タイ、日本、フランスという多国籍の俳優とスタッフ、異なる言語と文化が混在する中、撮影された。『右側に気をつけろ』(87)などのゴダール作品や『TOKYO!』<メルド>(レオス・カラックス監督)を手掛け、国際的に活躍するキャロリーヌ・シャンプティエを撮影監督に、フランスの名優グレゴワール・コラン(『オリヴィエ オリヴィエ』『ビフォア・ザ・レイン』『ネネットとボニ』)を迎えた本作は、言語や文化の壁を乗り越えた一体感によって完成し、異国の地で七つの夜を体験した一人の女性が、自分の中にある滞りを流していく様を瑞々しく伸びやかにスクリーンに映し出している。
監督:河瀨直美
脚本:狗飼恭子/河瀨直美
撮影監督:キャロリーヌ・シャンプティエ
編集:河瀨直美/ドミニク・オーヴレイ/金子雄亮
プロデューサー:長澤佳也
制作:リアルプロダクツ
製作:リアルプロダクツ/ポニーキャニオン/ファントム・フィルム/ビジュアルアーツ/百々俊二
出演:長谷川京子/グレゴワール・コランほか
日本/ 90分/カラー/アメリカン・ビスタ/ドルビーSRD(ドルビーデジタル5.1ch)/日本語、タイ語、フランス語
特別協賛:シンハービール
後援:タイ国政府観光庁
支援:文化庁
宣伝:ファントム・フィルム
配給:ファントム・フィルム