USB
愛の進化論。
2009年6月6日-2009年7月3日
行き場のない今の日本で、
破滅と再生に向かう極限のラブストーリー
誰も到達したことのない特異で甘美なラブストーリーの傑作
桜が舞い散る映像美の豊かなポエジーと、現代日本の知られざる裏社会を鮮烈に映し出したハードボイルドの融合。そして、出口なしの状況で蠢くひとりの青年がたどる哀しい運命。
舞台は茨城県筑波のとある小さな町。一見、のどかで平和な風情だが、実は原子力発電所の臨界事故が原因で立ち入り禁止区域が残っており、不穏な空気感で覆われている。この町の実家で暮らす孤独な青年・祐一郎は、開業医だった亡き父の跡を継ぐべく、医学部を何年も受験しているが、まったく身が入らない。常態化した倦怠感の中、ギャンブルやドラッグの世界に深くハマリこみ、さらなる絶望と焦燥に苛まれていく彼は、極秘で行なわれている放射線科の臨床試験アルバイトを知り、やがてひとつの決断を下す―。
冷酷な情報が錯綜し、眼に見えない不安に脅かされている現代日本の若者たち。彼らに等身大の共感を持って、破滅と再生に向かう男女の姿をロマンティックな筆致で描き出したのは、独自の作風でカルト的支持を得るゼロ年代の鬼才監督、奥 秀太郎。宝塚歌劇団やNODA-MAP、毛皮族など、多数の人気劇団の舞台映像や、自身の作・演出による舞台劇などを手掛けながら、自主制作で映画を撮り続け、『カインの末裔』は2007年のベルリン国際映画祭に正式出品されて高い評価を受けた。今作『USB』は、硬質な構築美の上に、かねてから奥がこよなく愛している桜のモチーフが効果的に生かされ、彼の最初の到達点と言うべき作品が完成した。
キャストには、奥の才能に惹かれた豪華な面々が集結。主人公・祐一郎には、『カインの末裔』に続いて主演を務め、自らも映画監督である盟友・渡辺一志。祐一郎の母親役には、『太陽』や『SAYURI』で国際的な評価を持つ桃井かおり。さらに日本映画界きっての名バイプレーヤーである大杉連や大森南朋、NODA・MAP主宰の演劇界の重鎮・野田秀樹 、銀杏BOYZのヴォーカリスト・峯田和伸、毛皮族主宰の江本純子など、日本のカルチャーを牽引するカリスマたちが脇を固める。そして祐一郎の恋人・恵子を演じる期待の新人女優、小野まりえを含めた鉄壁のコラボレーションにより、誰も到達したことのない特異で甘美な映画世界が、いま、ここに咲き乱れる―。
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一見幸福な風景が静かに蝕まれていく。
見てみぬふりをする、あえてさける、くさいものにふたをするのが大好きな日本人。
多くの若者が絶望する現実を、真実をあえて語ろうとしない。
政治的・社会的問題を解決しないままなし崩しにしていく。
そこにこそ自分たちの鬱の根源がある。
あいまいすぎるのもいいかげんにしろ。
僕は行き場のない日本の闇の中で,「愛」の糸口を探したかったのです。
─奥 秀太郎
監督+脚本:奥 秀太郎
撮影:与那覇政之
音楽:藤井 洋
編集:溝上水緒
美術:平沢達朗
スチール:大山ケンジ
デザイン:野寺尚子
製作:M6 TRANCE PICTURE WORKS
出演:渡辺一志/桃井かおり/峯田和伸(銀杏BOYZ)/大森南朋/小野まりえ
/大杉漣/野田秀樹
2009/日本/35mm/カラー/アメリカンビスタ/ドルビーSR/95分
宣伝:楽舎
配給:NEGA