女と銃と荒野の麺屋
A Woman, A Gun, and A Noodle Shop
欲望の銃弾が撃ち込まれる
2011年9月17日-2011年10月21日
★第60回ベルリン国際映画祭コンペティション出品
中国最高の巨匠チャン・イーモウが、
コーエン兄弟の傑作『ブラッド・シンプル』の驚くべき再創造に挑んだ
オリエンタル・ノワールの誕生!
『初恋のきた道』といった胸に染み入る感動作や、『HERO』などの豪華絢爛な大作を発表し、北京オリンピックでは壮麗なる開会式&閉会式の演出を手がけたチャン・イーモウ監督。そんなチャン監督には、20年以上前に鑑賞して以来「幾度となく脳裏に甦り続けた」と語る“心の1本”があった。コーエン兄弟(『ファーゴ』『ノーカントリー』『トゥルー・グリット』)が1984年に発表した『ブラッド・シンプル』である。そんな彼の新たな冒険、それは『ブラッド・シンプル』を中国へ舞台を置き換えてリメイクするという企画だった。かくして完成した本作はストーリーの骨格こそオリジナルを踏襲しているが、何と時代物であり、オープニングから次々と刺激的な光景が目に飛び込んでくる斬新な仕上がり。観客を驚かせ、陶酔させ、唸らせることに徹したチャン監督の技巧と美学が冴え渡るエンターテインメント快作となった。
欲望にまみれ、一丁の拳銃に翻弄される滑稽にして哀れなひとりの女と3人の男。
はたして最後に生き残るのは誰なのか?
万里の長城の西の果てにほど近い荒野の町。そこで中華麺屋を営む中年男ワンは、怒りに身を震わせていた。妻が若い従業員リーとの浮気に走り、商人から拳銃を購入したらしいのだ。警察官チャンからその報告を受けたワンは、妻とリーの殺害をチャンに依頼。ところが麺屋の金庫に眠る大金に目をつけていたチャンは、ワンの思惑とは違う行動に打って出る。このときすでに誰もコントロールできない“人生の悪戯”に絡め取られた勝ち気な妻と臆病な愛人、傲慢な夫と狡猾な悪徳警官の4人は、破滅への道を転がり落ちていくのだった……。
『ブラッド・シンプル』からその本質を受け継いだ『女と銃と荒野の麺屋』のストーリーの妙味は、滑稽なまでに愚かで欲深い人間たちの運命を見すえた、予測不可能な展開にある。クライム・スリラーにおける完全犯罪はふとした誤解やすれ違いから破綻していくのが常だが、本作の主要キャラクター4人はそれぞれが嫉妬、復讐心、強欲、罪悪感に駆られ、思いがけない悲劇のドミノ倒しを招き寄せてしまう。次は誰が殺され、最後に誰が生き残るのかという手に汗握るサスペンス。そこに一丁の拳銃が登場人物を嘲笑うように翻弄するアイロニーや、死体隠しをめぐるサプライズなどが加わり、一瞬たりとも目が離せない。オリジナル版以上にブラックユーモアをふんだんに盛りつけている点も本作の特色と言えよう。
☆おいしい麺屋の麺生地は、なぜ回して作るのか?
映画のなかでも注目される麺の生地回し。パフォーマンスと思いきや、生地を回す事には、ちゃんとした理由があります。丸い形で発酵させた麺生地は、気泡でふっくらしています。手や丸棒だけで伸ばしていくと、気泡が潰れてしまいますが、生地を遠心力で伸ばす事により、気泡も潰れずに伸び、もっちりとした仕上がりになるのです!
監督:チャン・イーモウ
主演:ヤン・ニー/ヒー・ダーフォン/スン・ホンレイ
2009年/中国映画/90分/カラー/2.35:1/ドルビーデジタル
協力:ハピネット
配給:ロングライド